幸先裕明ブログ

2016年11月

割当先の決定と特別利害関係人

A社(非公開会社・取締役会設置会社)が譲渡制限株式を第三者割当て増資で行うとき、割当先は取締役会で決議する(会社法第204条2項)こととなります。

このとき、割当先が、A社の取締役であったり、A社の取締役が代表取締役である株式会社(以下「B社」)の場合、A社において利益相反取引には該当しないものの、割当先を決定するA社の取締役会において、当該取締役は特別利害関係人に該当すると解されています。

従って、当該取締役は、割当先を決定する取締役会において議決権を行使することができないことはもちろんのこと、定足数にも算定されず、さらに議長にもなることができないとされているため、注意が必要です。

ただ、B社がA社の完全親会社であり、B社のみが割当てを受ける場合はどうでしょうか。

そもそも特別利害関係人が議決に加わることができないのは、会社に対して忠実義務等を負う会社経営の専門家たる取締役は、専ら会社のために議決権を行使すべきところ、特別の利害関係を有する場合、会社のために議決権を行使することが期待できないから(新・会社法100問〔第2版〕323ページ)とされているためですが、上記のような完全親子関係にある場合は、実質的には当該取締役は個人的な利害関係を有しているとはいえず、特別利害関係人には該当しないと考えるのが穏当ではないでしょうか。

また、譲渡制限株式の譲渡承認の場合に、譲渡当事者となる取締役や譲渡当事者となる会社の代表取締役が特別利害関係人に該当すると考えられるため、同様の意味も持つ割当先を決定する取締役会において特別利害関係人に該当するとされていることについても、完全親会社が割当先となる場合は、このような配慮は不要であるといえるでしょう。

なお、登記の場面においては、特別利害関係人に該当する取締役を定足数から除いた場合でも過半数の賛成があれば、決議の効力は妨げられないとされているため、事実上特別利害関係人への該当性は問題にならないことが多いのが現実です。(以上、参考文献「商業登記ハンドブック〔第3版〕」、「新・取締役会ガイドライン〔第2版〕」)

2016年11月11日